2019年11月初旬にGoogleがローカル検索に取り入れたニューラルマッチングとは?
2019.12.19
すでに2018年からGoogleのWeb検索に使われていたニューラルマッチングですが、いよいよローカル検索への導入が2019年11月初旬に始まったと公式に発表されました。今回は、そもそもニューラルマッチングとはどのような機能なのか、他のAIベースアルゴリズムと何が違うのかを解説したうえで、今回の発表について詳しくご説明します。
ニューラルマッチングとは?
ニューラルマッチング(Neural matching)とはAIをベースとしたアルゴリズムの一種で、単語と概念を関連づけているのが特徴です。日本には「行間を読む」という言葉がありますが、ニューラルマッチングはこの表現に似ています。つまり、ニューラルマッチングという人工知能的な機能は単語が持つ本来の意味だけでなく、より曖昧な単語の概念を理解しユーザーの意図やニーズを汲み取って検索結果に反映させているのです。
上記はGoogle SearchLiaisonのツイートで、ニューラルマッチングの特徴が端的に表現されています。下段のツイートで最も目を引くのが下記の2点です。
- ニューラルマッチングを利用すると、今よりもかなり進んだことが出来るようになる
- 商号や対象を表す正確な単語を使用しなくても、意図を概念的に関連づけて理解する
通常のWeb検索に対しては2018年から使われていた
GoogleがWeb検索に対してニューラルマッチングを導入したと公式に発表したのは、2018年9月でした。まずは、Googleの創設20年時に発表された公式ブログ上の解説文を見てみましょう。
私たちはニューラルネットワークが「単語の理解」から「概念の理解」を可能にする、大きな飛躍の局面を迎えています。ニューラルネットワークの分野で開発された neural embedding と呼ばれる手法は、言葉をより曖昧な、根本的な概念へと変換することで、検索クエリの概念と文書の概念を対応づけることができます。私たちはこの手法を「ニューラル マッチング」と呼んでいます。これにより、たとえばユーザーが「テレビが変なんだけどなぜ?」といったような質問をした場合、質問の単語がページに含まれていなくても、対象となるページを表示することができるようになります。 (なお、テレビの写りが変な理由としてソープオペラ効果という現象が挙げられます)。
引用元:Google Japan Blog
上記の説明文を要約すると、下記の4点が見えてきます。
- ニューラルマッチングとはニューラルネットワークの進歩によって生まれたシステム
- 単語が持つ本来の意味ではなく、単語の背景に隠れている「概念」を読み取る
- KWを入力した検索ユーザーの意図を読み取る
- KWが不足していても、前後の単語から判断して対象ページを表示する
さらに、Googleのダニー・サリバン(Danny Sullivan)氏は下記のツイートを投稿しており、ニューラルマッチングをWeb検索へ導入した結果、30 %のクエリに影響を与えたと解説されています。
2019年11月初旬にローカル検索へ導入したと公式発表
ローカル検索の身近な例として、検索結果を地図上にマッピングして表示するGoogleの「ローカルリスティング」が挙げられます。これらのローカル検索に対するニューラルマッチングの導入が2019年11月初旬からスタートしたというニュースは、Google検索の広報アカウントとして知られる「Google SearchLiaison」によって公式に発表されました。まずは、2019年12月3日に投稿された下記のツイートを見てみましょう。
上記のツイート内で注目すべきポイントを2つの側面からピックアップしてみました。
▼ローカル検索への導入について
- ローカル検索の結果を生成するプロセスでニューラルマッチングの利用を開始した
- すでに11月初旬からスタートしている
- 単語と概念がどのように関連づけられているのか、より理解しやすくなる
▼ニューラルマッチング自体について
- Googleが2018年から検索語句に使っていたAIベースのシステム
- 検索語句にどのようなユーザー心理が働いているのか、理解するのに役立つシステム
- ニューラルマッチングは他の言葉に置き換えて使える優れた同義語システムと言える
ニューラルネットワークとは?
ニューラルネットワークが格段に進歩していなければ、ニューラルマッチングは誕生していません。ニューラルネットワーク(Neural Network)とは情報処理システムの一種で、モデルになっているのは人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)です。
人間の脳が限られた情報から推理して答えを導き出せるように、ニューラルネットワークはユーザーが入力した最小限のKWを手掛かりに関連性のある入力されていない単語と結びつけていきます。つまり、従来の情報処理システムが単語の理解に特化していたのに対し、ニューラルネットワークには「単語の概念」や「検索意図」まで理解できるという強みがあるのです。
AIベースの他のアルゴリズムとの違いは?
ニューラルマッチングへの理解を深めるには、AIベースの他のアルゴリズムと比較してみるのが近道です。ここでは、代表的な3種類と特徴を見比べてみましょう。
- ニューラルマッチング:検索語句の意味を概念レベルで理解し検索意図を解釈する
- Rankbrain:単語とページの内容を概念レベルで関連付けて解釈する
- Hummingbird:すべての単語を考慮してクエリの理解を深めている
- BERT:自然言語処理技術の一種で、助詞や単語の強弱に対する理解度が高い
ニューラルマッチングとRankbrainの違い
Google SearchLiaisonはニューラルマッチングとRankbrainの違いについてもツイートを投稿しています。ここでは、実際のツイートをご紹介しつつ注目点をピックアップしてみましょう。
▼2つの違いについて(上段)
- Rankbrainはページ内容を概念レベルで解釈している
- ニューラルマッチングは検索語句を意図レベルで解釈している
▼Rankbrainについて(下段)
- Googleでは2016年に導入した
- 導入した目的はページのテーマ性を理解するため
- ページに検索語句が無くても関連性のある最適な内容なら検索結果に表示できる
▼ニューラルマッチングについて(上段)
- 検索意図をGoogleが理解するのに役立つ
- 「なぜテレビが変に見える?」だけでソープオペラ効果との関連を察知する
- ソープオペラ効果と明記されていなくても関連性を解釈して検索結果を表示できる
▼相違点の要約と共通点(下段)
- Rankbrainはより適切にページの内容を概念レベルで解釈するのに役立つ
- ニューラルマッチングはより適切に検索語句を意図レベルで解釈するのに役立つ
- どちらも特別な分析やウェブマスターの努力を必要としない
- 2種類ともより自然な解釈を促進するコアシステム
ニューラルマッチングとHummingbirdの違い
「ニューラルマッチングとハミングバードアルゴリズムの違いは何ですか?」という質問に対し、Googleのダニー・サリバン氏がTwitterで分かりやすく解説されています。
https://twitter.com/dannysullivan/status/1201565873397551104?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1201565873397551104&ref_url=https%3A%2F%2Fseo-lpo-consultant.com%2Fgoogle-november-2019-google-local-update-confirmed%2F
- 2つの概念は似ている
- Hummingbirdは全ての単語をより考慮することでクエリへの理解を深める働きをする
ニューラルマッチングとBERTの違い
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)とは、自然言語処理技術の一種で、AIベースのアルゴリズムでも判別しにくい「てにをは」などの助詞や単語の強弱に対する理解に定評があります。
https://twitter.com/dannysullivan/status/1201567373251268608?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1201567373251268608&ref_url=https%3A%2F%2Fseo-lpo-consultant.com%2Fgoogle-november-2019-google-local-update-confirmed%2F
BERTもニューラルマッチングと同じくニューラルネットワークの手法が影響しているため混同されがちですが、上記の通りGoogleのダニー・サリバン氏がTwitter上で「全く別物だ」と明言しています。
ちなみに、2019年12月10日に投稿されたGoogle SearchLiaisonのツイートによると、BERTが日本語にも対応できるようになったと発表されています。
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導入後の気になる公式ツイートまとめ
Googleがローカル検索へニューラルマッチングを導入して以降、公式サイトや関係者から関連のツイートが数多く投稿されています。この段落では、特に目を引くツイートについてご紹介しましょう。
展開は完了したが小さなアップデートは今後も繰り返される
https://twitter.com/dannysullivan/status/1201556394459009024
- ローカル検索へのニューラルマッチングの展開は完了した
- ただし、小さな更新は常に発生するので検索結果やコンテンツ自体も変化するだろう
- 今回の試みを「November 2019 Local Search Update」と名付けている
スパム対策が目的ではない
https://twitter.com/dannysullivan/status/1201554821762781184?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1201554821762781184&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.suzukikenichi.com%2Fblog%2Fgoogle-rolled-out-november-2019-local-search-update%2F
- ニューラルマッチングを導入した目的はスパム対策ではない
- とはいえ、スパムの排除に役立つ可能性はある
- 目的は「クエリとコンテンツのより適切な理解」と「ローカル検索結果の品質向上」
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クエリとコンテンツの両方を理解するのに役立つ
https://twitter.com/dannysullivan/status/1201555123920486405?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1201555123920486405&ref_url=https%3A%2F%2Fseo-lpo-consultant.com%2Fgoogle-november-2019-google-local-update-confirmed%2F
- 質問:ローカルランキングのファンダメンタルは変わらず、ただGoogleがローカルクエリを理解するのに役立つという意味ですか?
- 回答:Yes、ただしクエリだけでなくコンテンツの理解にも役立ちます。
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適用後に特別な対応は必要?
- NMを適用したローカル検索を利用するからと言って、特別な対応は必要ない
- ビジネス上、変更すべき要素も全くない
- ビジネスで成功を目指すならGoogleが提供しているアドバイスを継続して下さい
まとめ
「単語の理解」から「概念の理解」へと進化したニューラルネットワーク。その延長線上にあるのが、ニューラルマッチングというAIベースのアルゴリズムです。従来のアルゴリズムでは、「エリア・商品名・取扱店の種類」など検索する際に考慮すべき項目が沢山ありました。ですが、今回ローカル検索に導入されたニューラルマッチングのアップデートが繰り返されるにつれて、商品名もしくは目的を入力するだけで検索ユーザーが求めている検索結果が表示されるようになるかもしれません。
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