Googleの新アルゴリズムBERTアップデートとは?日本語適用の影響とSEO対策
2020.02.12
2019年10月に導入が開始されたGoogleの新しいアルゴリズム「BERT」。同年12月には日本語への適用やTOP STORIESの改良がスタートし、国内でも続々とセミナーが開催されるほど注目度が高まっています。そこで本記事では、BERTの特徴を踏まえたうで検索結果への影響やジョン・ミューラー氏が言及したSEO対策など、気になるポイントをまとめてみました。
Googleの新アルゴリズム「BERT」とは?
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)とは、人工知能(AI)をベースとした自然言語処理技術の一種です。
人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)がモデルになっている情報処理システム、「ニューラルネットワーク」の進歩によって生まれた新しい検索アルゴリズム、と言った方がイメージしやすいかもしれません。
「BERT」は日本語にすると「変形生成による双方向のエンコード表現」という意味ですが、簡単にいうと、「変形生成」という機械学習技術によって特定の単語の前後(左右)両方向に深く単語を読み込んで文脈を予測するものです。
正式名称の頭文字がセサミストリートの主要キャラクターの名前と同一なので、世界中で「バート」と呼ばれています。
KWから「文」や「語句」の理解へと進歩
BERTの最大の特徴は、キーワード1つずつではなくクエリの前後を含めた「文」や「語句」として理解できるようになった 、という点でしょう。
▼BERTが解析に使うカギとなるもの
単語と単語を繋ぐ「助詞」:~が、~の
単語と単語を結び付けた「会話型の長いクエリ」:~ではない〇〇
名詞を補足する「前置詞を含むクエリ」:~へ(to)、~のため(for)
つまり、BERTというアルゴリズムは検索クエリのメインワード以外の単語からユーザーの検索意図を適切に汲み取り、コンテンツマッチング精度を格段にアップさせているのです。
音声検索にも強い!
GoogleがBERTを導入した背景には、検索クエリの「多様化」と「複雑化」の2点が挙げられます。
なぜなら、音声でコンピューターを操作するスマートスピーカーやチャットボットなどの普及が進むにつれて、メインワードのみ入力する検索クエリから、話しかける会話形式のクエリに変化したため、人間の会話をよりリアルに認識できる検索アルゴリズムが求められる時代になってきたからです。
その点、会話型の長いクエリで助詞や前置詞などを理解できるBERTなら、「OK Google」と話しかけてスタートする検索方法に最適化され、メインワード以外が持つ意図を解析してより適切な検索結果を表示できるのです。
ちなみに、下記の2社が2020年までに検索方法がどのように変化していくのかをリサーチしたところ、驚異的な結果が報告されています。
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Googleが「BERTアップデート」を公式発表!
2019年10月25日、Googleは検索エンジンに対してBERTアップデートを行ったとThe Keyword で公式に発表しています。
上記のアナウンスを要約し、3つの側面から注目すべきポイントをピックアップしてみました。
▼GoogleがBERTを開発した理由
毎日、数十億もの検索があるが、その内15%のクエリは初めての入力スタイルだった
予測できない検索スタイルに対し、適切な結果を表示させる方法が必要だった
KWを羅列して入力する検索方法は、自然な質問の仕方ではない
確かに、利用できるデバイスの種類が増えるにつれて検索スタイルも多様化しています。だからこそ、時代に合った言語理解を備えた検索アルゴリズムを開発し続けているのでしょう。
▼BERT導入のプロセス
2018年からオープンソース化していた
ソフトウェアだけでなく、ハードウェアも新しくする必要があった
今回初めて最新のCloud TPU を採用した
上記の情報から、BERTが備えている機能は従来のハードウェアではカバーしきれないほど複雑で高いスペックだと解釈できます。
▼BERTの評価について
過去5年間で最も大きな躍進
検索の歴史上、最も大きな前進
今回のBERTアップデートは、同じくAIベースの検索アルゴリズムである「RankBrain」が導入された2015年以来の大掛かりな対策です。
ちなみに、GoogleではBERTやRankBrainと同様にAIベースの「ニューラルマッチング」や「Hummingbird」といったアルゴリズムも活用しています。
他のAIベースのアルゴリズムとBERTとの違いが知りたい、基礎となっているニューラルネットワークに興味があるという方は、下記の記事を参考にして下さい。
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公式ツイートのポイント解説
Google SearchLiaisonでも、BERTアップデートについて下記のようにツイートしています。
この時点では対象が英語検索だけに限定されていますが、それ以外にも注目すべきポイントが3つ明記されています。
米国の英語検索ではクエリの10%に影響し、問題点が改善されている
検索ランキングに反映されている
強調スニペットに適用している
検索結果への影響は?BERTと従来のアルゴリズムを比較
では実際に、BERT導入後の検索結果がどのように変化するのか、スタディケースを見ながらご説明しましょう。
下記の画像は、「2019年にブラジル人の旅行者がアメリカへ行く場合、ビザは必要か?」という疑問に対する検索結果を表示した画面です。
導入前は「to」の役割が理解できず、本来「アメリカに行くブラジル人」向けの情報が表示されるべきところ、「ブラジルに行くアメリカ人」向けの情報が表示されていました。一方、導入後は「to」の役割を正しく理解しているのが分かります。
▼BERT導入前
結果:アメリカ人がブラジルに旅行する際のビザの必要性に関するサイトを上位表示
クエリの解釈:アメリカ人を主体として認識
問題点:目的を示す「to」の役割と前後の関係性を理解していない
▼BERT導入後
結果:アメリカ大使館がブラジル人旅行者向けに発信しているビザ情報サイトを上位表示
クエリの解釈:ブラジル人の旅行者を主体として認識
改善点:目的を示す「to」の役割と前後の関係性を的確に理解している
BERTの日本語適用がスタート!
初期段階では英語だけに対応していたBERTですが、いよいよ2019年12月10日から70言語以上で適用をスタートさせたとGoogleSearchLiaisonがツイートしています。
今回のロールアウトには日本語も含まれていますので、特にBERTの影響を受けやすいロングテールクエリについては今後の順位変動を見守る必要がありそうです。
GoogleがBERTを活用してトップニュースの構成を改良!
2019年12月11日、GoogleはBERTを活用してモバイル検索のトップニュースを改良したと公式サイト で発表しています。今回の改良により、トピックごとに分類して掲載できるようになりました。
ちなみに、ここで言うトップニュースとは最新ニュースをカルーセル形式で掲載するウェブ検索機能を指しており、英語では「TOP STORIES」と表記します。
例題として、「NASAのニュースは」と検索した時の結果を見てみましょう。
改良前は、NASA(米航空宇宙局)のニュース記事が一覧で表示されるものの、トピックごとに分類されずに並んでいる状態です。
次に、改良後の結果を表示した下記の画像を見て下さい。赤枠で囲ってある通り、同じNASAのニュースでもトピックごとにまとまっているのが分かります。
1つ目のカルーセル:月面探査の入札企業として5社が新規参入したニュース
2つ目のカルーセル:木星の衛星エウロパが水蒸気を検出したニュース
ただし、BERT によるトップニュースの改良は今のところアメリカだけの限定です。他の地域と言語については、数カ月後に導入する予定だと告知されています。
ジョン・ミューラー氏がBERTのSEO対策について言及
2020年1月10日に開催されたGoogle Webmaster Hangoutで、ジョン・ミューラー氏がBERTのSEO対策について言及しました。
同氏は「BERTアルゴリズムに対して、どのようなSEO対策が必要ですか?」という質問に対し、「ページ上のテキストに影響を与えることができる」と前置きしたうえで、実に明解な回答を発信しています。
▼BERTに対するSEO対策
最適化の基本は自然に書くこと
誰もが理解できるようなテキストが望ましい
反対に、Googleはキーワードの不自然な詰め込みを注視している
上記の回答を踏まえると、小手先の対処法ではなく正攻法であるユーザーファーストを何より重視したコンテンツこそが、BERTに最適化する最良の方法だと解釈できます。
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まとめ
Googleが「5年間で最大の飛躍」と謳うだけあって、BERTによる言語理解の向上は検索結果に劇的な変化を与えるでしょう。とはいえ、特別なSEO対策は必要ありません。年に数回のペースで実施される他のコアアップデートと同様に、重要なのは「誰に」「何を」「どのように」の3点を分かりやすく表現したコンテンツ作りなのです。
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