ストーリーマッピングは重要?作成方法や例も紹介
2021.07.09
メディア作成、運営に携わっている方は「ストーリーマッピング」という言葉を聞く機会が多いと思います。
しかし「そもそもストーリーマッピングって何?」と思っている方もいるのではないでしょうか?
ストーリーマッピングとは、「メディアを利用するユーザーの具体的な行動に沿い、メディアが提供すべき機能を優先順位順にまとめたもの」です。
何故このストーリーマッピングが必要なのかというと、「ユーザーにとって利便性の高いメディアの制作に繋げられるから」です。
本記事ではストーリーマッピングの概要と必要性、具体的な作成手順などについて詳しく解説します。
ストーリーマッピングとは
「ストーリーマッピング」とは、「ユーザーのメディア利用時の要望に対し、メディアの機能を優先順位ごとに並べたリスト」のことを言います。
Webメディアの多くは、「ユーザーの要望(あの情報が知りたい等)を満たす」ことを主眼に置いていますから、ユーザーの要望に応じた機能を設けることは大切です。
しかし「ユーザーの要望を満たす」と言っても、ユーザーが実際にメディアを利用するときの行動を無視してしまっては、「要望に応じた機能」の設置はできません。
そこで「メディア利用時のユーザーの行動を並べ、その行動の段階ごとに生じる要望に応じ、メディアの機能を優先順位ごとに並べるリスト」が必要になってきます。
このリストがストーリーマッピングというわけです。
このストーリーマッピングは、上から順に次のようなフォーマットで構成されています。
- 時系列順に並んだユーザーのサイト利用時の行動
- サイト利用時にユーザーが取る具体的な行動
- ユーザーの行動に応じたサイト側の具体的な機能
以上のストーリーマッピングのフォーマットの中、最下段の「サイト側の具体的な機能」は、ユーザーにとっての優先度が高い機能順に並べられます。
このストーリーマッピングを作成するには、「ユーザーストーリー」という、「ユーザーのメディアに対する要求」をまとめる必要があります。
ユーザーストーリーとは
「ユーザーストーリー」とは、「ユーザーのメディア利用時の行動で顕在化する要求」です。
例えばサイトのログイン画面を作るとき、多くの場合はEメールとパスワードでログインできる機能を設けます。
しかしこれが必ずしもユーザーの利便性を満たすとは限りません。
例えば「頻繁にキャッシュを削除するユーザー」はブラウザに保存されるメールアドレスやパスワードの情報も消してしまうことがあるので、「自動入力されないメールアドレスやパスワードでログインすることは不便」と感じがちです。
こういったユーザーの要望を満たすにはまずあらゆるユーザーを想定し、彼らのメディアサイト利用時の行動と、それに応じるための機能をまとめる必要があります。
これがユーザーストーリーであり、このユーザーストーリーに基づいて彼らのメディア利用時の行動に応じ、サイトの機能を並べていきます。
このユーザーストーリーを作成するうえで大切になるのが、以下の3つのポイントです。
- Card:「誰が」、「何のために」、「何をしたいか」をカードにまとめる
- Conversation:カードだけでは伝わらない要素を話し合う
- Confirmation:認識のズレをなくすために確認をする
では、こういったユーザーストーリーを作成することにはどんな効果があるのでしょうか。
ユーザーストーリーを作成するメリット
ユーザーストーリーを作成することで得られるメリットは、以下の通りです。
制作目的が明確になり、共同作業を円滑に進められる
明確なユーザーストーリーを設定することで共同作業の円滑な進行につなげられます。
メディアサイトもシステム開発も複数人で行うものですから、制作・開発を円滑に進めていくためには、各人が「何を重視してサイトやシステムを開発するか」を認識していることが大切です。
そのためユーザーストーリーの設定は、メディアサイトやシステム制作に携わる人々がサイトやシステム開発の目的を理解し、チームワークを活かして作業へつなげるという意味があります。
こういった共通理解を持たなければ、各人のメディア制作の目的が一貫せず、共同作業が進みません。
制作作業の行き詰まり防止になる
ユーザーストーリーを作ることには、メディア制作時の「リスク管理」を行えるというメリットもあります。
例えば度重なる仕様変更によるサイト機能の増加、デザインがなかなか決まらないといったことにより、ユーザーの需要からズレたものを作ってしまうこともあります。
しかしユーザーストーリーを設定しておくことで、メディア制作時に重視すべきポイントを押さえることができ、機能増加や仕様変更時に「外してはならない要素」を見極めることが可能です。
場合によっては、ユーザーストーリーと照らし合わせて機能増加や仕様変更の必要性がないと判断する材料にもなるので、ユーザーストーリーは制作作業行き詰まりの防止にもなるのです。
ユーザーストーリーの種類
「メディア利用時のユーザーの行動に応じて顕在化する要求」を想定し、必要な機能をまとめることがユーザーストーリーの役割です。
著書『ストーリーマッピングをはじめよう』では、以下の3つを紹介しています。
- オリジンストーリー:ユーザーが顧客となるまでのストーリー
- ユーセージストーリー:ユーザーがサービスを使う過程を表している
- コンセプトストーリー:ターゲットにサービスを知ってもらう体験ストーリー
このうちオリジンストーリーが、ユーザーに対してメディアへの興味から成約などの行動に移ってもらうものとされ、ユーセージストーリーはチュートリアルなどのサービス体験時の出来事を中心に扱います。
ストーリーマッピングの作成方法
ここからはストーリーマッピングの作成方法を解説していきます。
ストーリーマッピング作成に必要なものは、以下のとおりです。
- 会議室
- ホワイトボード
- 模造紙
- 付箋紙(3色)
- 水性ペン(黒)
ユーザーストーリーの流れを決める
まず、ユーザーストーリーの大枠の流れを決定します。
上から一番目にユーザーがサービスを利用するシーンを想定し、「サービス利用前」、「サービス利用中」、「サービス利用後」のフェーズに分けてストーリーの流れを決めます。
また、ユーザーストーリーの流れを決定する際は、ユーザーが「サービスを初めて利用するとき」や「継続して利用するとき」といった観点で考えると、より利用シーンを想定することが可能です。
ユーザーストーリーに沿い、ユーザーの行動をまとめる
ユーザーストーリーの流れに沿い、上から二段目にユーザーがとる行動を並べます。
例えば以下のような流れでユーザーの行動をまとめていきます。
- 検索をする
- 記事一覧を見る
- 記事内容を見る
- 別の記事へと移る
ユーザーの行動に応じたメディアの機能を決める
ユーザーの行動に沿い、上から三段目にメディアの機能をまとめます。
ユーザーの行動とサイトの機能に対する要望に応じるため、どのような機能をサイトに持たせるかといったことを具体的に書き出していきます。
例えば上記のユーザーの行動に対する機能としては、以下のようなものがあります。
- 検索をしやすいようにボタンクリックで検索窓を画面中央に表示する
- 記事一覧画面にユーザーの閲覧履歴に応じたおすすめ記事を表示する
- 記事内容に応じた別記事への内部リンクを設置する
- 別記事へと移りやすいように、記事の最後にもおすすめ記事を表示する
ストーリーマッピングの具体例
ここからは、ストーリーマッピングの具体例として、atama plusと株式会社パソナテックの2例を解説します。
atama plusのストーリーマッピング
atama plusのストーリーマッピングでは、ワークショップに至るまでに以下のようなプロセスを踏まえました。
対象プロダクトを使っておおまかな流れを掴み、各アクティビティの課題整理を行う
- ユーザーへの事前インタビュー
- プロダクトの使用現場視察
- ワークショップのマップの骨格づくり
- ワークショップ
- ワークショップでは以下のプロセスを踏まえ、プロダクト改善ポイントをまとめています。
チーム全員でユーザーがプロダクトを使用する流れを理解する
- プロダクト利用時のユーザーのニーズを質疑応答で把握
- サービス、またはビジネスにおいて必要ですぐに実現可能な機能(MVP)の決定
このatama plusでは、ストーリーマッピングを実施したメリットを「プロダクトの現状と問題点をチーム全体で把握し、MVPについての相互理解を生むことに役立つ」こととしています。
株式会社パソナテックのストーリーマッピング
続けて株式会社パソナテックのストーリーマッピングについてです。
株式会社パソナテックがワークショップに至るまでは、以下のプロセスを踏まえました。
- ターゲット層、サービスの課題等をまとめたリーンキャンバス作成
- プロジェクトの目的や背景、優先順位を伝えるインセプションデッキ作成
- ストーリーマッピングを実施
また、株式会社パソナテックはストーリーマッピングを実施したことによるメリットを「エンドユーザーからのフィードバックをもらえる」こととしています。
まとめ
ストーリーマッピングを作成することで、ユーザーの行動やメディアに対して要求する機能などを視覚化し、ユーザーの利便性を重視したメディアの作成を進められます。
また、ストーリーマッピングの作成は制作チームの作業目的を具体化させ、作業の行き詰まりを防ぐ効果もあります。
ストーリーマッピングを効果的に活用し、よりユーザーに寄り添ったメディアの制作を推進していきましょう。
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